August 25, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第9話

「ふーむ」
ホーエンローエの話を聞き終わってオスマンは大きく頷いた後しばらく考え込んだ。
「学院に古くから伝わる春の使い魔召還の儀式の歴史の中に、サモン・サーバントの呪文で使い魔以外のものを召還した例はない」
かえでの顔から血の気が引いて真っ青になる。
「あの、でも、私この世界のこと何も」
「わしも無駄に長生きしてきたが、口のきける使い魔に会うたのは初めてじゃ。じゃから、使い魔がどんな気持ちで召還されてきたのか聞いたことはない。じゃがどんな使い魔も契約した主人と気持ちを通じあわせておった」
かえでとホーエンローエは顔を見合わせた。
「じゃ、じゃあ、やっぱり私、きっと何かの間違いで」
「でも、コントラクト・サーバントは成功して、ルーンも」
かえでの発言をさえぎってホーエンローエは慌てて主張する。
「まぁまぁ、二人とも落ち着きなさい。で、そのルーンじゃが学院にあるどの書物にも記載されてないようじゃの」
いつの間にか使い魔のねずみのモートソグニルがオスマン氏の肩に乗ってちゅうちゅうと耳打ちしていた。
かえでが胸のルーンが刻まれたと思しきあたりをセーラー服の上から手でぎゅっと押さえると、布地が胸に押し付けられてその形と大きさが強調された。
ホーエンローエはそれに気を取られまいと意識を他の事に集中したが、オスマンは眼福とばかりに鼻の下を伸ばして凝視する。
「あの、校長先生。私が本当に使い魔かどうか確かめる方法はないんですか」
「お、おほん。なぜ自分が使い魔に選ばれたのか、始祖ブリミルの意思を尋ねる方法があるかもしれん。これを見よ」
オスマンが杖でテーブルを叩くと、箱庭のホログラフが浮かび上がった。
「おお」
思わずかえでとホーエンローエは感嘆の声を上げた。
「ここが学院じゃ」
学院の周囲の森や山が精密に再現された箱庭の中のマッチ箱ほどの大きさの家の模型を指して言う。
「南に下ると森の中に枯れた川のような道がある。これを西に向かって進む神社シュラインの隊列がある。今はこの辺かの」
箱庭の中にぽんっと馬車の模型のホログラフが現れる。
神社シュライン……移動する神社シュラインですか」
「いかにも。わしが昔世話になった巫女シャーマンがおるからこの招待状を持って訪ねるがよかろう」
オスマン氏が杖を振るうと羊皮紙と羽根ペンが現れ、宙で羽根ペンがすらすらと何かを書き記した。
最後の行にオールド・オスマンが自分でサインを書き入れると、羊皮紙は勝手にするすると巻き上がり、リボンと蝋で自動的に封緘された。
かえでとホーエンローエはホログラフの箱庭、中でもきちんと脚を交互に上げて進む馬車の模型の動きに見とれていた。
「ほれ、早く出発せんと追いつけなくなるぞ」
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shinji_i at 18:04│Comments(0)TrackBack(0)ゼロの使い魔 | SS

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