September 05, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第11話

ホーエンローエはかえでを引きずるように森を進んだ。
太く高い木が多くなり真っ直ぐに進めなくなり、また、乗り越えなければならないほど高く張った根も二人の行く手を阻んだ。
かえでもなんとかついてきているが、セーラー服は汗や泥や枝にこすれたせいで所々汚れてしまっている。いつへこたれて弱音を吐き始めてもおかしくない。
引き返したほうがいいかもしれない、とホーエンローエが立ち止まって暗い森を振り返ると、背後の木の陰からさっき追い返したはずの馬が首を出していた。
馬に近付こうとしたホーエンローエをはぁはぁと肩で息をしていたかえでが掴んで止めた。
息を整えながらかえでが問う。
「……なんで?……ついてこられる訳ないじゃないですか」
ホーエンローエも全身泥だらけだ。確かに馬にこなせる道のりじゃない。
木陰から覗いていた馬の首がぼとり、と地面に落ちた。断面の血は既に固まっている。
「ひっ」
かえでは飛び上がって驚きホーエンローエにしがみつく。ホーエンローエも肝を冷やし息を飲んだ。
二人が固まっていると、グルルルルルと獣のうなる声がその木の裏から聞こえ始めた。
ホーエンローエはできるだけ音を立てないように慎重に杖を抜いて構えると空いている手で背負ってきた細剣を抜いてかえでに手渡した。
「ふぇ、あ、あの、ちょっと」
「実は魔法が得意じゃないんだ」
「え、ええ〜っ」

詠唱を始めたホーエンローエの視線は前方の空中を見つめて止まっており、表情は固まったまま、口元だけが小さく動いている。
かえでは片刃の細身の剣を両手で前方に向かって構えた。
「早く魔法を……」
左右に震えている剣の先、木陰の後ろの闇の中から大きな二つの目が光る。
目と目の間は馬のそれの倍以上開いている。
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shinji_i at 18:08│Comments(0)TrackBack(0)ゼロの使い魔 | SS

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