September 12, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第12話

暗闇の中で光る二つの目と向かい合うかえでの耳にカチカチと何か硬い物同士が小刻みにぶつかりあう耳障りな音が入る。意識を集中しようと歯を食いしばると音が止んだので、鳴っていたのはかえで自身の奥歯なのだろう。
大きな獣のようなうなり声も止み、ホーエンローエが低く小さく唱える呪文だけがかえでの耳に伝わる。にらみ合いが始まってしばらく経つが、ホーエンローエの呪文はまだ終わる気配は感じられない。

「フゥッ」
と獣が短く息を吐く音がしたと同時にガサッと草木が揺れ、大きな黒い影が飛び出し鋭い爪を振り上げた。
爪の描く弧の先にはホーエンローエの首がある。
「あっ」
すばやく跳ね上がったかえでの両手が細剣で獣の爪をいなす。
ギャリンと金属同士がこすれ合うような音がして、爪は空を切った。
かえでは剣を振った勢いで転がるようにホーエンローエの前に躍り出、片膝をついて止まった。
獣の影は再び森の闇の中に消えたが、まだこちらを伺っているようだ。
ガサッと木々を揺らす音と共に今度は獣の影が高く飛び上がって二人を頭上から襲った。
「ひゃ」
驚いたかえでは片腕でホーエンローエを抱え上げ獣の落下点から飛びのくと、細剣を片手で構え着地の勢いで飛び掛ってくる敵に一閃を浴びせた。
「ギャッ」
と短く鳴き声をあげ、獣は木々の裏に回った。かえでが与えた傷は浅かったようで、相手はまだ二人を諦めてくれないようだ。
脅威は去っていないが背後から聞こえる呪文が頼もしく感じられ、かえでの心を落ち着かせ、また気力をみなぎらせてくれた。
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shinji_i at 16:58│Comments(0)TrackBack(0)ゼロの使い魔 | SS

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