SS

August 18, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第7話

「遅くなってすみません」
寮の玄関から駆け足で中央広場へと飛び出してきたホーエンローエはそう言いながらコルベールのもとへ駆け寄った。
「おお、何をしていたのかね」
「実は」
広場の中央ではルイズを中心にちょっとした騒ぎが起こっているようで、生徒達はそちらに群がっていて、コルベール先生との会話を聞かれる心配はなかった。
「呪文の練習をしている間にサモン・サーバントが発動してしまいまして」
「成功したのかね」
「はい……ただ、カメムシだったので」
「か、か、カメムシとな」
平静を装おうとしていたが、コルベールの動揺は隠しきれていなかった。
「奇遇だな、ホーエンローエ。僕も昆虫だ。ほら、先生、もうこんなに仲良くなりましたよ」
いつの間にか背後に立っていたクラウが、手に乗せたオオセンチコガネを優しく撫でながら口を挟んできた。
「そ、そうだ……な、何も問題はない……昆虫も立派な使い魔になる」
「そうですよね、コルベール先生ならそう仰ってくださると思っていました」
「で、コントラクト・サーバントは」
「はい、無事に。強烈な臭いでしたが」
「……そうかね。で、ルーンも刻まれたのだな」
「はい」
ホーエンローエは返事をしながらポケットを探る振りをした。
「いや、よ、よろしい。ルーンについては後ほどレポートを提出するように。二人とも下がってよろしい」
「はい、失礼します」
クラウとホーエンローエは会釈して数歩下がると、顔を見合わせて笑いあった。
「見たかい、あの顔。ひどいよな、こんなにかわいいのに」
クラウは手のひらに乗せたオオセンチコガネを口元に寄せるとくちびるを突き出してキスをする振りをした。
「君のカメムシも見つかったら紹介してくれよ」
「ああ、部屋に戻ってるかもしれないから探してくるよ」
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shinji_i at 17:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

August 17, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第6話

「……運命?」
「呪文を唱えた魔法使いに最もふさわしい使い魔が召還されるんだ」
「……私が使い魔?」
「そう、身体のどこかに使い魔のルーンが刻まれているはずだ」
彼女はがばっと身を起こすと水兵服の襟元から自分の胸を覗き込み、そこに何かを見つけると涙目でホーエンローエへ詰め寄った。
「ルーンって」
「ルーンは主人と使い魔の契約のしるしだな。どちらかが死ぬまで契約は有効だ。ところで、どこにどんなルーンが」
と、覗こうとしたが両手で押し返された。
「……ダメ、見せられない、禁止」
ともあれ、ルーンが刻まれているということは、コントラクト・サーバントは成功したと見ていいだろうと胸をなでおろした。
「僕の名はホーエンローエ・シリングフェスト。よろしく、えーと」
手のひらを上に向けて下から手を差し出す。彼女はぼんやりと前方に視線を落としたまま手を重ねた。しっとりとした肌に包まれた丸みのある柔らかな手が震えていた。
「夕奈木かえでです」
変わった名前だが響きに温かみがある、とお世辞でも言おうと思ったが今はそっとしておいた方がいいだろうと思い留まった。
唐突にコンコンとドアを叩く音が響く。
少女はびくっと身を震わせると、慌てて左右を見渡し隠れるところを探した。
「はーい」
ホーエンローエは返事をしながら、ベッドから毛布を引きはがし少女の肩へかけてやった。彼女は鼻先まで毛布を引き上げ、ベッドのすみで小さく丸まった。
「どちら様?」
扉を開けずにドア越しに問いかける。
「俺だけど」
声の主はクラウ、ホーエンローエのクラスメイトで落ちこぼれ仲間のリーダー格だ。魔法の腕はからっきしだが、明るさと同い年とは思えないほど面倒見の良さで人気があった。
「先生が探してたぞ。早くしないと日が暮れちまうぞ」
誰ともつるもうとしないホーエンローエの事を事あるごとに気にかけて、声をかけてくれるのだった。
「あ、ああ……」
「何だよ、幻獣じゃなかったら恥ずかしいとか悩んでるのか」
幻獣……なのかな、とホーエンローエはベッドの上の少女に目をやった。彼女は目が合うとぶるぶると首を横に振った。
「ヘビでもトカゲでもカエルでもいいじゃねぇか。俺なんてオオセンチコガネだぜ」
「成功したのか。おめでとう。スカラベなんてセンスあるじゃないか」
「ありがとよ。キスはちょっと戸惑ったけどな。お前も早くやってみろ」
キスのくだりに彼女が気付かなければいいが、きっとショックでそれどころじゃないだろう。
「分かった。すぐに行くから」
そうして会話を切り上げると、クラウの足音が十分遠ざかるまでホーエンローエはドアに耳をつけていた。
(本文はまだまだ続きます。皆さんの応援が原動力です。頑張ります)
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shinji_i at 17:15|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

August 16, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第5話

使い魔を肩に担いで、ホーエンローエは誰もいない薄暗い廊下を寮へと急いだ。
走りながら、もし今肩の上の彼女が目を覚ましたらややこしい事になりそうだな、なんて思いが頭をよぎったが、心配は杞憂に終わった。
息も絶え絶えに自分の部屋に辿り着くと、ばたんと扉を閉め鍵をかけベッドに使い魔を横たわらせた。
まだ目を覚まさないなんてちょっとおかしいな、と息を整えながら考えたが、それはひょっとしてまだコントラクト・サーバントの儀式を済ませていないからではないのかと思い至ってまた息が上がってしまいそうになった。
呪文の詠唱は完了している。あとは……くちびるとくちびるをあわせるだけだ。
ベッドに手を突くと、横にした使い魔に覆いかぶさった。
今度は邪魔が入る前に済ましてしまおう、と乾くくちびるを一度舌なめずりして顔を近付ける。
彼女の大きな胸が肘につかえて一瞬動きが止まったが、そのまま押しつぶすと眠っている使い魔のくちびるを奪った。
肘で押していた胸にぽよんと押し返されて身体を起こす。
これで手順が正しければ使い魔のルーンが身体のどこかに刻まれるはずだ。
固唾を呑んで見守っていると、不意にぱちっと彼女の目蓋が開かれた。
その目はしばらく天井を見つめていたが、ゆっくりとホーエンローエの方へ首を向け視線を合わせた。
すると、突然、ばっと上半身を起こすと周囲を見回し、両手両足を胸の前で合わせ身を守るように縮こもった。
「こ、ここ、どこですか?なんでわたしこんなところにいるんですか?」
身体をそむけながら、真っ青な顔を向け、不安の色濃い表情で問いかけてきた。
「ここはハルケギニア大陸のトリステイン王国」
「はる……け、ぎ、とりすてい……おうこく?」
「トリステイン魔法学院の僕の部屋で、君は使い魔として僕に召還されたんだ」
「魔法学院?使い魔として召還?」
何だか、全てが初耳といった顔で、オウム返しをするだけだった。
やがて、がくがくと震え出し、大きな瞳いっぱいに涙を浮かべ始めた。
「そんな……私、茶道部の部室で……お抹茶をいただいている最中で」
「さどうぶ?」
ホーエンローエはそう問い返しながら、落ち着けてやろうと彼女の肩に手を伸ばしたが、すっと身を引かれ空振ってしまった。
仕方なくそのままベッドのへりに腰掛けると、彼女はすすっとベッドの対角のもっとも遠い位置に移動してしまった。
「お茶碗に手を伸ばそうとしたら、床が白く光り出してそれがどんどん大きくなって、足元から……すとーんって」
見ていて痛々しいほどの、ショックを隠しきれない表情だった。
貧血を起こしたようにふらふらと頭を揺らすと両手をベッドについた。
「なんで私を?」
うつむいたままの使い魔の問いに魔法使いの少年は答えた。
「ぼ、僕の意思じゃない。もっと大きな……運命のような、必然だよ」
答えを耳にしても彼女は身じろぎ一つしなかった。
(応援ありがとう。まだまだ続きます)
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August 15, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第4話

使い魔として召還された少女はまだ目を覚まさない。
彼女の長い睫毛に縁取られた大きな目蓋は、王子のくちづけを待つ王女のように閉じられたままだ。
少年はごくり、とつばを飲み込むと覚悟を決め、魔法書を手に杖を振りかざした。
「えー、コ、コホン……我が名はホーエンローエ・シリングフェスト。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ」
詠唱が終了しても何も変化は現れない。呪文の完成にくちづけが必要であるからだ。
少女に覆いかぶさるように身体を曲げ、魔法書と杖を持ったまま床に手を突いた。
くちびるを突き出し目を閉じたその瞬間、がらがらっと教室の扉が開いた。
「まだ残ってるのかね」
オールド・オスマンの声だった。
ばっと立ち上がり気を付けの姿勢で返答する。
「はっ、はい。ただいま」
教室の入り口にいる学院長からは机の陰になって少女の姿は見えないはずだ。
「ただいま中央広場に向かいます」
魔法書をかばんに片付ける振りをしていると、足元からちゅうちゅうとねずみの鳴き声が聞こえた。オスマン氏の使い魔であるモートソグニルだ。
マズいと思ったが時既に遅く、使い魔のねずみはご主人様の元へ駆け戻ると肩に乗り、耳元で何かを報告している。
「なんと!」
オスマン氏は驚きの声を上げると肩にねずみを乗せたまま、かつかつとホーエンローエへと近寄ってくると、床で仰向けになっている少女を見て顔色を変えた。
「これは……」
「あ、あの彼女は、その……」
オールド・オスマンはホーエンローエの顔を覗き込むと、だらしなく目じりを下げ、鼻の下を伸ばした。
「誰もいなくなった教室でそういうプレイか。ええ趣味じゃのう、ホッホッホッ」
思わず拍子抜けしてはぁ?と問い返してしまった。
「隠さんでもええ。そうかそうか、御主は真面目そうな顔してなかなかやりよるのぅ」
「いや、あのこれは」
「召使いにどんな格好させるのも、どんなプレイで楽しむのも自由じゃが、教室はいかん。危険が大きすぎる。寮の自室で我慢しなされ」
オスマン氏はこのこの、と杖で少年のわき腹を突いた。
「他の先生じゃったら停学どころじゃ済まんぞ。かわいいメイドもおいとまを出す羽目になりかねん」
「は、はぁ」
「しかし、ご主人様の命令にどこまでも忠実な立派なメイドを失うのは生徒のみならず学院としても大きな損失であるからして」
オスマン氏は仰向けになった少女の胸の二つの大きな丘をちらっと覗き見ながら
「わしは何も見なかったことにしよう、うむ」
と真顔に戻ってふんぞり返った。
「あー、何も言わずとも良い。ただ感謝の念を忘れるでないぞ」
「は、はい。し、失礼しました」
学院長のご高説をたまわったホーエンローエは少女を肩に担ぐと教室を後にし、寮の自室へと向かった。
(本文が省略されました。いつも読んでくれる皆さんありがとう。続きを読むにはご意見ご感想をお送りください。)
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August 14, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第3話

何人かの男子生徒が彼を中央広場へと誘ったが、彼は誘いを断って教室に残った。
誰もいなくなった教室でサモン・サーバントの呪文を練習しておきたかったのだ。
一人きりになった薄暗い教室で魔法書を開き、杖を掲げる。
「えーと、まず名乗りを上げて……杖を振りながら」
杖の軌跡を確認しようと魔法書から目を上げると、杖の先の空中に直径1メイルほどのぴかぴか光る鏡のような物が現れていた。
「うそ、詠唱はまだ……あ、あれ?」
授業で説明があったとおりの使い魔召還の様子だった。
うねりながら虹色に輝く円盤からにょきっと2本の足が生えてきた。
そのまま人の体がずるずると降りてくる。気を失っている女性のようだった。
「ちょ、ちょっと、ま、待って」
このままでは床に落ちてけがをしてしまうと、彼は慌ててその真下へ回って降りてくる足を掴んだ。
そして、よろめきながらも腰を抱え、胴体を肩へ担ぐように受け止める。
そうこうしているうちに頭も両腕も穴から抜け落ちてきて、彼の背中へとずるりとのしかかった。
「おっとっと、おっとっと」とバランスを取っている間に、宙にあった円盤状の鏡はみるみる小さくなって消失し、元の薄暗い教室に戻った。
とりあえず、気を失っている使い魔を床におろして全身を確認する。
人間だ。よりにもよって人間を使い魔に召還してしまった。
幼い顔をしているが、背の大きさから少し年上の女子だろう。
クラスの女子よりだいぶふくよかな体型で、髪や肌の手入れのされ方から言って育ちは贅沢だったんじゃないかと予想できる。
その身体の丸みを包む衣装は水兵のような上着に胸元には赤いリボン、短く広がったスカートとソックスに革の靴と言う組み合わせであった。
顔立ちはクラスにいないタイプだ。トリステインでもゲルマニアでもガリアでもロマリアでもない、もっと他の外国、ひょっとして東方だろうか。衣装が変わっているのもそのせいかも知れない。
すーすー、と聞こえる寝息にあわせて大きな胸が規則正しく上下している。
つい、そこをじっと見てしまい、恥ずかしくなって目をそらす。
まだ使い魔は目を覚まさない。彼は立ち上がって机の上に広げたままだった魔法書を見た。
「次の手順は……コントラクト・サーバント」
彼は少しどきりとし、顔が紅潮していくのを感じた。
召還できてもトカゲかカエルだろうと覚悟していた彼の前に、人間の使い魔が、血色よく艶やかで柔らかさと弾力を兼ね備えた口唇をもって現れたのだ。
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shinji_i at 17:33|PermalinkComments(5)TrackBack(0)

August 10, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第2話

いつまでも席を立とうとせず、教室に留まっている生徒がもう一人いた。
背が高いわけでもなければ、低いわけでもなく、太っているわけでもなければ、痩せているわけでもなかった。
無難に整えた髪と、並みの作りの制服、一般に良く使われるスタイルの杖、街で普通に売られているかばんを身に着けている。
これといった特徴のない容姿に、可でも不可でもない出自のクラスでも特に目立たない男子生徒であった。
彼はまだ自分の得意とする属性を見付けていなかった。かといってルイズのようにどの属性もゼロでもなかった。
魔法覚えたての小さな子どもが練習するような簡単な呪文しか成功したことがない。
どの属性の呪文も上達しない彼を練習嫌いの不真面目な生徒と扱う教師はいなかった。
殆どの教師は彼の呪文が成功するのを見ても、失敗するのを見ても、ただ微妙な笑みを返すだけだった。
魔法の素質がないと言ってしまうのは簡単だが、過去にも才能の開花が遅かった大魔法使いの例もないわけではない。
ただ、そんな大魔法使いになれるまで悠長に魔法の研究を続けられる貴族はほんの一握りだけなのが現実だった。
魔法の才能がなければ、卒業後は一刻も早く領地に戻り、次期跡取りとして統治に必要な色々を身に着けるが得策と両親は考えるだろう。
殆どの教師にとって、彼はそんな魔法に向いていない貴族のよくある例のひとつなのだった。
そんな魔法使いに向いてない貴族の子弟たちは、学院にいられる数年間を親元から離れて自由に遊べる最後の機会として楽しんでいる。
しかし、彼はそういった一団とも離れて学院生活を送っていた。
彼は自分で自分自身に引導を渡せないでいる……まだ望みを捨てられないのであった。
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shinji_i at 14:24|PermalinkComments(6)TrackBack(0)

August 09, 2006

ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第1話

天の中央で赤と青の二つの月が交差する○○の月、第○週第○日。
ここ、ハルケギニア大陸西方に位置するトリステイン王国は、始祖プリミルが興した由緒正しき四つの王国の一つである。
緑豊かな丘陵地帯に作られた、王国の貴族の子弟達の通うトリステイン魔法学院は朝から慌ただしい雰囲気に包まれていた。
魔法の力が最も効果を発するといわれるこの日、第一学年の生徒達の進級のための最も大切な行事である、使い魔召還の儀式が行われようとしていた。

説明を受けた生徒達が我先にと教室を後にし中央広場へと向かう中、気乗りしない様子で革装の魔法書をもてあそんでいる生徒がいた。
少しいらいらと桃色掛かった極細のブロンドを揺らしている女生徒は名をルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールといった。
表情や仕草にあどけなさが残っているものの、その気品は騒がしい教室の中でも凛と輝きを放っている。
誰もが声を掛けづらそうにその横を通り過ぎていく中、褐色の肌に赤い髪の肉感的な女生徒がルイズに近付いた。
「準備はもうお済みになって?」
ゲルマニア王国からの留学生であるキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーはわざとらしくトリステイン流の言い回しでルイズを促した。
「うっさいわね」
ルイズはばさばさと魔法書を乱暴にかばんに放り込むと肩にかけて席を立ち、キュルケを無視して教室を出て行った。
あらあらと半ば驚き半ばあきれた顔で見送るキュルケの背後には小柄な少女がくっついていた。
タバサと呼ばれる青い髪の眼鏡の女生徒は日頃から何かとキュルケに世話を焼かれているのであった。
タバサもそれを嫌がるでもなく嬉しがるでもなく言われるままに従っている様子である。
「……」
タバサは広げていた本から顔を上げてキュルケを無言で見上げた
「はいはい、分かったわよ。私達も中央広場に向かいましょう」
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shinji_i at 13:57|PermalinkComments(32)TrackBack(0)