ゼロの使い魔
ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第15話
「しっかりしろ、ホーエンローエ」
クラウに頬を叩かれてホーエンローエは目を開き、醒め切らないうつろな目で辺りを見回し、かえでを探した。
かえでを介抱し、そのセーラー服に付いた枯葉や泥をはらっていたメイド服の女性がホーエンローエの視線に気付いた。
「無事です。今すぐ処置が必要な怪我はしてないようです」
そういうとメイドは気を失ったままのかえでを背負って立ち上がった。
ホーエンローエもクラウに肩を抱えられ立ち上がらされる。
「さっきの奴が戻ってくる前にここを発とう」
薄暗くなり始めた森の中をホーエンローエはクラウの肩を借りながら進んだ。
まだ朦朧としているホーエンローエにクラウが訊ねた。
「さっき、何を唱えてたんだ?」
「よく覚えてない」
ホーエンローエは霞がかったようにすっきりしない頭を振った。
「杖を構えた瞬間に自然と口から呪文が出てきたんだ。そんなことより、どうしてここに?」
「ああ、学院長が君の部屋を出た後、僕の部屋にやってきてね。君も虫の使い魔を召還したのかって。最初に虫と聞いてまさかとは思ったが、君もだったとはね」
「僕のせいで君の嘘までバレちゃったんだな。すまん」
「気にするな、いつまでも隠し通せるとは思ってなかったさ」
クラウは笑いながらホーエンローエの背中を叩いた。
「ひどいですわ、よりにもよってフンコロガシだなんて」
まだ眠ったままのかえでを背負って先を進んでいたメイドが振り返る。
「この子はカメムシですってね」
泥だらけの疲れ切った顔で寝ているかえでを背負ったまま、メイドはすいすいと森の中を進む。
あの細い身体のどこにそんな力があるのだろうか。
「ところでクラウ、あの衣装は?」
「ああ、あわてて学園を出たんでああいうのしか調達できなかったんだ。召還した時は君の使い魔と同じ服を着ていたよ」
クラウに頬を叩かれてホーエンローエは目を開き、醒め切らないうつろな目で辺りを見回し、かえでを探した。
かえでを介抱し、そのセーラー服に付いた枯葉や泥をはらっていたメイド服の女性がホーエンローエの視線に気付いた。
「無事です。今すぐ処置が必要な怪我はしてないようです」
そういうとメイドは気を失ったままのかえでを背負って立ち上がった。
ホーエンローエもクラウに肩を抱えられ立ち上がらされる。
「さっきの奴が戻ってくる前にここを発とう」
薄暗くなり始めた森の中をホーエンローエはクラウの肩を借りながら進んだ。
まだ朦朧としているホーエンローエにクラウが訊ねた。
「さっき、何を唱えてたんだ?」
「よく覚えてない」
ホーエンローエは霞がかったようにすっきりしない頭を振った。
「杖を構えた瞬間に自然と口から呪文が出てきたんだ。そんなことより、どうしてここに?」
「ああ、学院長が君の部屋を出た後、僕の部屋にやってきてね。君も虫の使い魔を召還したのかって。最初に虫と聞いてまさかとは思ったが、君もだったとはね」
「僕のせいで君の嘘までバレちゃったんだな。すまん」
「気にするな、いつまでも隠し通せるとは思ってなかったさ」
クラウは笑いながらホーエンローエの背中を叩いた。
「ひどいですわ、よりにもよってフンコロガシだなんて」
まだ眠ったままのかえでを背負って先を進んでいたメイドが振り返る。
「この子はカメムシですってね」
泥だらけの疲れ切った顔で寝ているかえでを背負ったまま、メイドはすいすいと森の中を進む。
あの細い身体のどこにそんな力があるのだろうか。
「ところでクラウ、あの衣装は?」
「ああ、あわてて学園を出たんでああいうのしか調達できなかったんだ。召還した時は君の使い魔と同じ服を着ていたよ」
September 26, 2006
ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第14話
かえでがホーエンローエをかばうように抱きついた直後に、二人はものすごい衝撃で突き飛ばされて、頭から腐った枯れ草の中に突っ込んだ。
口や鼻には泥が入り込み、背中に何かが乗って、かえでは地面に押さえつけられた。
続くであろう攻撃に身を固めたが、直後に「ぎゃん」という巨獣の鳴き声と、がさがさと木立を揺らして逃げていく物音がした。
そして、静寂が訪れ、かえではおそるおそる振り向いて背中を押さえつけている何かを確認した。
それはロングスカートの黒いワンピースに身を包み、フリル付きの白いエプロンとエプロン同様白いフリルの付いたカチューシャを身に付け、まとめられた長い髪の奥から切れ長の目でかえでを見つめていた。
恐ろしい爪から二人を救い、今、かえでの背中を片足で踏んづけているのはかえでより少し年上のお姉さんで格好はメイドだった。
「追いつきました、クラウ」
かえでの背中に足をかけたままのメイドが声を掛けた方向から魔法学院の黒いローブを着た少年が二人に駆け寄る。
「ホーエンローエ、無事か」
メイドが足下から二人を解放すると、クラウと呼ばれた少年はホーエンローエを抱きかかえた。
それまで小さく低く唱え続けられていたホーエンローエの呪文がそこで止んだ。
その途端にかえでは目の前が真っ暗になり、そのまま気を失った。
(応援ありがとうございます。もう少々お付き合いください)
15話へ進む
口や鼻には泥が入り込み、背中に何かが乗って、かえでは地面に押さえつけられた。
続くであろう攻撃に身を固めたが、直後に「ぎゃん」という巨獣の鳴き声と、がさがさと木立を揺らして逃げていく物音がした。
そして、静寂が訪れ、かえではおそるおそる振り向いて背中を押さえつけている何かを確認した。
それはロングスカートの黒いワンピースに身を包み、フリル付きの白いエプロンとエプロン同様白いフリルの付いたカチューシャを身に付け、まとめられた長い髪の奥から切れ長の目でかえでを見つめていた。
恐ろしい爪から二人を救い、今、かえでの背中を片足で踏んづけているのはかえでより少し年上のお姉さんで格好はメイドだった。
「追いつきました、クラウ」
かえでの背中に足をかけたままのメイドが声を掛けた方向から魔法学院の黒いローブを着た少年が二人に駆け寄る。
「ホーエンローエ、無事か」
メイドが足下から二人を解放すると、クラウと呼ばれた少年はホーエンローエを抱きかかえた。
それまで小さく低く唱え続けられていたホーエンローエの呪文がそこで止んだ。
その途端にかえでは目の前が真っ暗になり、そのまま気を失った。
(応援ありがとうございます。もう少々お付き合いください)
15話へ進む
September 22, 2006
September 21, 2006
ゼロの使い魔9巻アニメイト限定版が店頭に山積み
ゼロの使い魔(9) アニメイト限定版
ゼロの使い魔フェア開催中(10/15まで)
ただし、しおり8種をコンプする為にはコミックアライブ11月号の購入が必須(ビスチェ柄)。
しおりはいらないけど、ルイズの誌上通販フィギュアの申込みの為に買うって人は過去のエントリーをご参照ください。
ゼロの使い魔フェア開催中(10/15まで)
ただし、しおり8種をコンプする為にはコミックアライブ11月号の購入が必須(ビスチェ柄)。
しおりはいらないけど、ルイズの誌上通販フィギュアの申込みの為に買うって人は過去のエントリーをご参照ください。
September 20, 2006
ゼロの使い魔SS「ご主人様の憂鬱」第13話
再び木の陰から「フゥッ」という威嚇と共に、二人に向けて巨大な獣の爪が横薙ぎに払われる。
かえではそれを視界の隅に捕らえると同時にホーエンローエの脇へと飛びずさり、細剣を斜めに構えて敵の爪を防ぐ。
直後、無防備に晒された巨獣のわき腹に攻撃を加えるが、固い毛皮にさえぎられ、やはり致命傷にならない。
「ギニャッ」とひと鳴きするが、敵は攻撃の体勢をとったままかえで達を伺いつつ草陰へと身を潜めた。
そのやや緩慢な動きを見てかえでは、相手にこちらの力を見透かされただろうか、と不安を覚えた。
もう時間稼ぎは通用しないかも知れないとかえでは思い至り、次の敵の攻撃に備えて剣を突けるように構えなおした。
がさっと下生えが揺れると同時にかえでは跳躍し、枝葉をかきわけて出てきた獣の鼻面に向けて剣を突き立てる。
ざしゅっと敵の馬面の眉間の間に剣は深々と突き刺さった。
……馬面?
草陰から飛び出してきたそれは馬の生首だった。
囮だ、と気付いて背後を振り返るかえでの目に飛び込んできたのは、爪を振り上げた巨大な獣がホーエンローエに襲いかかる光景であった。
ホーエンローエは微動だにせず呪文の詠唱を続けている。
剣の先には馬の頭が刺さっていて振り回せる状態ではない。
かえでは剣を捨ててホーエンローエに飛びついて覆いかぶさった。
14話へ進む
かえではそれを視界の隅に捕らえると同時にホーエンローエの脇へと飛びずさり、細剣を斜めに構えて敵の爪を防ぐ。
直後、無防備に晒された巨獣のわき腹に攻撃を加えるが、固い毛皮にさえぎられ、やはり致命傷にならない。
「ギニャッ」とひと鳴きするが、敵は攻撃の体勢をとったままかえで達を伺いつつ草陰へと身を潜めた。
そのやや緩慢な動きを見てかえでは、相手にこちらの力を見透かされただろうか、と不安を覚えた。
もう時間稼ぎは通用しないかも知れないとかえでは思い至り、次の敵の攻撃に備えて剣を突けるように構えなおした。
がさっと下生えが揺れると同時にかえでは跳躍し、枝葉をかきわけて出てきた獣の鼻面に向けて剣を突き立てる。
ざしゅっと敵の馬面の眉間の間に剣は深々と突き刺さった。
……馬面?
草陰から飛び出してきたそれは馬の生首だった。
囮だ、と気付いて背後を振り返るかえでの目に飛び込んできたのは、爪を振り上げた巨大な獣がホーエンローエに襲いかかる光景であった。
ホーエンローエは微動だにせず呪文の詠唱を続けている。
剣の先には馬の頭が刺さっていて振り回せる状態ではない。
かえでは剣を捨ててホーエンローエに飛びついて覆いかぶさった。
14話へ進む